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医療者活用ツール(移植後長期フォローアップ外来(LTFU外来)活用ツール)

最終更新日:2018年5月18日

はじめに

このページでは、医療関係者の方向けに、移植後フォローアップ外来(LTFU外来)における活用ツールについての概説・紹介をします。
移植後LTFUが必要とされる背景や役割を簡単に解説したあとに、それぞれの移植施設においてLTFU診療をより効率的に進めていただくために活用できるツールについての提案、そして最後に、実際に国立がん研究センター中央病院のホームページに公開されているLTFUツールを一例としてご紹介します。

背景

造血器疾患に対する造血幹細胞移植は1950年代より開発され、当初はHLA一致同胞ドナーのある若年患者のみが対象となる時代もありましたが、非血縁ドナーからの移植の選択肢に加え2000年以降には、強度減弱型/骨髄非破壊的前処置を用いた移植や臍帯血移植の普及により高齢者や合併症のある症例に対しても移植適応が拡大したこと、またより近年にはHLA半合致血縁ドナーからの移植が国内外でも多く行われるようになり、本邦の移植件数は近年、増加傾向にあります。さらにHLAマッチングの手法、移植前処置、免疫抑制剤、感染症や移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)に対する支持療法の改善などを経て合併症死亡のリスクが減少し、移植成績が改善していることが国内外から報告されています(図1)。つまり移植を受けて病気を克服し、社会生活に戻る長期サバイバーが確実に増えてきています。
移植後2年、5年経過したすべての患者さんが、移植後に何らかの新たな病気にかかるわけではありませんが、GVHDそのもののほかGVHDに対する免疫抑制剤の影響、更に遡って移植前処置や移植前の化学療法など、移植に関連する様々な要因の影響は退院後も長期に続きます。内分泌疾患、二次がんなどの身体的晩期合併症(患者さんの情報 11.移植の実際-晩期毒性-)、QOL低下や心理面への影響(患者さんの情報 10-7. 感情の変化)、経済面、就学就労、家族・ドナーの問題(患者さんの情報 13. 医療費、復職就労・復学就学、サポート体制)など、退院後の外来でスクリーニングと介入を行い見逃さないようにしたいポイントは様々あります。そしてそのような移植後の問題点は、移植後の時期によっても変わってくる、つまりLTFU外来では1年未満、2年目以降、5年目以降といった移植後の時期ごとに異なるポイントに留意する必要があることも認識しておく必要があります。

LTFU外来

造血幹細胞移植後長期フォローアップ専門外来(long-term follow up:以下LTFU)の役割は、造血幹細胞移植後、主に治癒が得られた状態にある患者さんを対象とした晩期合併症のマネージメント、身体面、心理面、社会面等の多角的な支持と考えられます(患者さんの情報 15.移植後長期フォローアップ外来)。本邦では2012年4月に「移植後患者指導管理料」として保険収載され、以降、LTFUを設立する施設が増加していることが予測されますが、LTFUの体制については、医師の診察のほかに日本造血細胞移植学会LTFU看護師研修受講済みの看護師が患者に関わることが保険点数算定のために必要である、という点以外には正式な取り決めはありません。日本造血細胞移植学会のLTFUガイドライン(造血細胞移植学会ガイドライン第4巻)が2017年5月に発刊され、成人と小児両分野のLTFUにおける診療内容について参照できる内容になっておりますが、まだまだ各施設が移植数やリソースも様々な中、手探りでLTFUを運用しているのが現状ではないかと思われます。

本邦のLTFUにおける課題~ツールの必要性・有用性

国立がん研究センター研究開発費福田班が行ったLTFU運用を開始している移植施設10施設を対象とした「LTFU現状把握のための聞き取り調査」(第40回日本造血細胞移植学会総会 看護一般口演 看O2-11-2(5))では、‘LTFU診療における課題’として、“記録に時間を要し、時間外の業務になっている”、“晩期合併症の発症に関する患者からの報告・アップデートが十分ではない”などのご意見を挙げていただきました。
また、同聞き取り調査では‘LTFUの質向上、均てん化を目指すうえで必要なもの’、つまりリソースにかかわらずどのような施設でも同様にLTFUを運用しやすくするためのツールとして、下記のようなアイデアが挙げられました。

1)患者問診票

  • スクリーニングと介入をすべき身体面・心理面・社会面の問題を拾い上げる
  • 漏れなくスクリーニングできること、また問診票に答えておいていただくことで診療開始後にひとつひとつ口頭で確認するより時間節約となり、スムーズな診療につながることが期待される
  • 移植後2年未満などの比較的移植後早期にスクリーニングすべき項目、より晩期にスクリーニングすべき項目を分けて問診票を作成する
  • より晩期の合併症に関する問診票については、郵送によるスクリーニングやレジストリデータとの紐づけなども検討し得る

2)移植後の時期ごとのスクリーニング・指導項目リスト

  • 移植後の時期によって変化していくスクリーニングが必要な事項と、それぞれに対する指導例を示す
  • 漏れなくスクリーニングをすること、そして指導内容の均てん化をする

3)効率的な看護記録テンプレート

  • ②のスクリーニング項目など、LTFU外来において確認・指導した内容・情報を、効率よく記録するためのテンプレート
  • 重要事項が漏れなく記載されること、時間の節約、情報の統一が期待される

4)合併症・項目別の患者用説明資料(リーフレット)

  • 退院後に起こり得る合併症の概要やセルフケアについて、それぞれの合併症別に1ページ程度のボリュームで説明をしたリーフレット資料
  • 口頭で説明するだけではなく手元に残る形で、またそれぞれの患者さんに関係することだけを情報提供することで、効率的な情報提供と理解につながることを期待

現状では、これらのツールについては必要性に応じて、それぞれの施設で独自のものが使用されていると思われますが、同聞き取り調査でも、それぞれのツールについて多施設共通で使用できる資料が公開されることで、LTFU新規立ち上げ時の労力を省き、質の均てん化が目指せるのではないか、といった意見が寄せられました。

各移植施設のツール紹介

ご紹介した「LTFU現状把握のための聞き取り調査」を行った福田班では、Ⅳでご紹介した各LTFUツール案の必要性を確認することや共通ツールの構築に向けたアイデアを募ることも含め、LTFUの現状把握と課題の抽出を目的とした全国多施設アンケート調査「移植後長期フォローアップ外来に関する全国多施設実態把握調査」を予定しています(2018年1月時点)。全国の様々な施設で共通して活用できるツールを作成するためには、まずは全国多施設のLTFUの現状や、各ツールの必要性、要望などを把握する必要がありますので、現在計画している多施設アンケート調査の結果も確認後に、多施設で取り組んでいけたらと考えております。
最後に国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科LTFUのホームページをご紹介します。2014年秋に開始した単施設のLTFU前方視的観察研究(国立がん研究センター研究開発費福田班)の追跡期間が2017年秋に終了したため、LTFU外来で用いてきたツールの公開を始めました(2018年3月)。当院単施設としても、各ツールについては前方視的観察研究の結果も加味したうえで適宜改版を行う予定でおりますが、実際に移植施設のLTFU診療において活用されているツールの一例として是非ご参照いただけましたら幸いです。
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/stem_cell_transplantation/040/index.html

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