一般社団法人日本造血細胞移植学会 The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation

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8-1. 免疫抑制療法について

最終更新日:2018年5月15日

免疫抑制療法とは

免疫抑制療法は自己免疫疾患、膠原病、リウマチ性疾患、アレルギー疾患など免疫異常が関与する疾患の治療、臓器移植では拒絶予防に用いられておりますが、同種造血幹細胞移植では生着不全や移植片対宿主病(GVHD)の予防や治療に用いられています。特に移植後6-30日頃に発症する急性GVHDは、同種造血幹細胞移植時に輸注される造血幹細胞浮遊液中に含まれるドナー由来のリンパ球によって引き起こされる合併症で、このリンパ球が患者さんの正常細胞を異物として認識し攻撃することで、原因不明の発熱に続いて皮疹、下痢、黄疸などを引き起こします。この急性GVHDは重症化すると生命を危険にさらすため、この過剰な免疫反応を抑えるために移植前日から免疫抑制療法を開始し、重症型の急性GVHD発症を予防することが必要となります。

免疫抑制療法の実際

一般に免疫抑制療法としてシクロスポリン(CyA等と省略;静注:サンディミュン®、内服:ネオーラル®)あるいはタクロリムス(プログラフ®)にメソトレキサート(MTXと省略)を併用する方法がよく用いられています。シクロスポリンならびにタクロリムスは移植前日から点滴投与にて開始されますが、これらの薬剤は血中濃度を測定し、最適な用量設定を行うことでその効果が最大限に発揮されます。さらにこれらの薬剤の代謝・分解や体外への排泄には個人差があるため、投与開始時には頻回に薬物血中濃度を測定し、個別に用量調節を行う必要性があります。さらに併用薬剤や特定の食べ物(グレープフルーツやセント・ジョーンズ・ワート含有食品など)で血中濃度が変動すると重篤な副作用が起きたり、逆に効果が弱まったりする可能性もあるため投与中は血中濃度測定を定期的に継続する必要性があります。副作用としては腎障害、中枢神経障害、高血圧、微小血管障害、高血糖、多毛などがあります。もし重篤な副作用が出現した場合には速やかに減量もしくは中止する必要があり、代わりに副腎皮質ステロイドの投与が行われます。

メソトレキセートは移植後1、3、6、11日目(11日目は場合によって中止)に分割して点滴投与が行われます。副作用としては粘膜障害や肝障害が認められることがあります。抗ヒトT細胞グロブリン(ATGと省略)は急性GVHDの発症頻度が高い末梢血幹細胞移植、非血縁者間移植、HLA不適合移植、さらに生着不全が起こりやすい骨髄非破壊的前処置を用いた造血幹細胞移植やさい帯血移植時に併用されることがあります。

ミコフェノール酸モフェチル (MMFと省略) は腎移植後の難治性拒絶反応に対する治療薬として開発された免疫抑制薬です。シクロスポリンやタクロリムス、副腎皮質ステロイトとは作用機序が異なることから、欧米では造血幹細胞移植後の GVHD予防ならびに治療に臨床応用されています。日本においては保険適応外ですが、国際的にはシクロスポリンやタクロリムスに併用して用いられています。 

これらの免疫抑制療法により、移植後の治療経過としては中等症以上の急性GVHDの発症がなければシクロスポリンもしくはタクロリムスをゆっくりと減量を開始し、再燃や悪化がなければ点滴投与から内服薬に変更されます。。そして移植後100日前後に認められる慢性GVHDについても問題がなければ、多くの場合移植後6ヶ月頃には終了となります。

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