一般社団法人日本造血細胞移植学会 The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation

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10-6. 性的問題

最終更新日:2018年5月17日

造血幹細胞移植の生殖器への影響

造血幹細胞移植にともなう抗がん剤治療や放射線全身照射(TBI)によって、精巣や卵巣など生殖機能に影響を及ぼします。長期的な影響として、不妊や性生活への影響が起こります。移植後の生殖機能の回復は移植前処置の方法、移植を受ける年齢、移植後の慢性GVHDの発症の有無によって大きく影響をうけます。治療開始前に卵子や精子を凍結保存する方法がありますが、治療との兼ね合いが難しいので、担当医と十分相談する必要があります。

移植直後は、性生活のことや将来子どもを持つことなどを考える余裕もないかもしれませんが、徐々に生活の幅が広がり、心身ともに余裕が出てきたころにふと悩むこともあると思います。移植後の性生活にはどのような影響があるのか、どのようなことを注意したほうが良いのか、だれに相談すればよいのかについて解説します。

妊孕性の温存

男性への影響

造血幹細胞移植後の男性に起こりやすい性機能障害は、主に性欲の低下と勃起障害であることが報告されています。性欲の低下は、造血幹細胞移植の前処置によって、男性ホルモンであるテストステロンが低下することによって起こります。また、性欲は心身の回復度やパートナーとの関係性などによっても敏感に影響をうけます。

造血幹細胞移植後に、勃起しにくくなったり、性交の最後まで勃起を維持することが難しくなった経験をする男性がいます。勃起障害の原因には、上述したようなテストステロンの低下のほかに、陰茎海綿体の動脈の開きが不十分なために、海綿体に十分な血流が流れないことが原因の場合があります。その場合は、薬物治療が有効な場合もあります。また、ごく稀にペニスの表面に慢性GVHDによる皮膚障害が起きたために、勃起するたびに強い疼痛や出血などを伴う場合があります。

勃起障害の原因を調べる検査は泌尿器科で受けることができます。勃起障害に対しては、ホスホジエステラーゼ5 (PDE5) 阻害剤が有効な場合もあります。性生活に困難や不安、ペニスの表面に異常を感じた場合は、早めに担当医に相談するとともに、泌尿器科を受診することが望まれます。その際には、治療経過の詳細を含めた担当医からの紹介状を用意してもらいましょう。

造血細胞移植後の男性に起こる性機能への影響は、いずれの症状も一時的な場合が多いことが報告されているため、長期的な心身の回復を待つことも重要です。移植後は、性感染症にも罹りやすくなることが報告されていますので、感染に気を付け、性生活においてはコンドームを使用することが推奨されます。

女性への影響

女性は、造血幹細胞移植の前処置としておこなわれた化学療法や全身放射線照射(TBI)の影響で、多くの場合は卵巣機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンが十分に分泌されない状態になります。エストロゲンが欠乏すると、動悸やホットフラッシュ、骨粗しょう症といった更年期のような症状が現れます。エストロゲンが低下することによって、膣内の潤いが不足したり、膣粘膜に炎症が起きやすくなり、性交時に痛みを感じる女性が多くいらっしゃいます。慢性GVHDやTBIによる膣粘膜の癒着が生じている場合は、痛みだけではなく、性交が上手くいかないと表現される女性もいます。

このような痛みを伴った状態で性生活を続けると、性生活に恐怖心が出てきて、余計に痛みが増強する場合があります。まず、痛みがあって、性生活を楽しむことができないことをパートナーに伝えましょう。また、脱毛だったり、皮膚症状や倦怠感などの治療に関連した症状が長期化することによって、移植後に性生活に関心が持てなくなったと話す女性も多くいます。二人でリラックスして、お互いが楽しむことができる方法を試してみることが重要です。痛みに対しては、薬局などで市販されている膣潤滑ゼリーや潤滑ゼリーが多めに塗布されたコンドームを使用することもおすすめです。

移植後の性生活では、感染にも注意することが必要ですので性生活ではコンドームを使用することが推奨されます。また、性生活がなかったとしても外陰部や膣粘膜には刺激をさけ、清潔に保つことが重要です。ただし、外陰部は優しく洗いましょう。膣内部まで石鹸で洗うと炎症を余計に悪化させることがあります。下着は化繊のものや圧迫しすぎるものは避けましょう。

性交疼痛やホットフラッシュといったエストロゲンが足りなくて起きている症状に対しては、ホルモン補充療法を受けることによって改善されることもあります。そのためにも、造血幹細胞移植を受ける前から定期的に婦人科と上手く付き合っていくことが重要です。

新たな出会いやパートナーとのコミュニケーション

性生活を充実させるためには、パートナーとのコミュニケーションが不可欠です。性の問題は長年連れ添った夫婦であったとしても話しにくいことです。お互いを気遣い、あえて言葉にしないというコミュニケーションの方法もときには有効な場合もあるでしょう。しかし、ときには言葉で伝えなければ相手に理解してもらえないこともあると思います。そのときは、できるだけ「私は・・・と思っている」と私を主語にしてみてください。“わたし”を主語にすることで、相手を責めることなく、あなたの気持ちが伝わるかもしれません。パートナーとわかりあえたという感覚は、患者さんの心の緊張を解きほぐし、心身ともにリラックスさせてくれるはずです。
心理的な問題が原因の場合は、セックスカウンセリングを受けることも有用です。
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造血幹細胞移植を受けた患者さんの中には、治療後の新しい恋愛や結婚について、不安を感じている方もいるかもしれません。病気の経験をはなすことによって、相手がはなれていくのではないかと考えると、新しい恋愛に消極的になってしまうと移植後の若い患者さんから相談を受けることがあります。

新たな人との出会いの中で、自分の病気の体験を話すことはとても勇気がいることだと思います。まずは、病気をして失ったものだけではなく、自分の根底にあるものは何も変わっていないことに目を向け、つらい治療を乗り越えた自分に是非自信を持っていきましょう。

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