一般社団法人日本造血細胞移植学会 The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation

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11-8. 不妊

最終更新日:2018年5月18日

白血病やリンパ腫などの血液がんに対する抗がん剤投与や放射線照射は性腺(男性の精巣、女性の卵巣)に悪影響をおよぼし、不妊(自分の子供が出来ない)という状態を生じる可能性があります。これは若い患者さんにとって大きな問題です。使用する抗がん剤の種類によって性腺の障害の程度は大きく異なりますので、治療を開始する前にその影響について理解しておくことが必要です。特に造血幹細胞移植の前処置は大量の抗がん剤投与や全身放射線照射を用いて実施されるため、高頻度に不可逆的な(回復しない)性腺機能障害を生じます。その中でも影響が大きいのは骨髄破壊的移植前処置で用いる全身放射線照射(TBI、8Gy以上)と大量ブスルファン(BU、静注なら6.4mg/Kg以上)であり、シクロホスファミド(CY)の影響は比較的弱いと考えられています。実際、再生不良性貧血に対するCY単独の前処置を用いた移植後には男女ともに半数以上に性腺機能の回復が期待できます。一方、白血病などに対してCY-TBIあるいはBU-CYの前処置を行った場合、性腺機能はほとんどの患者において失われてしまいます。しかし、移植時の年齢が重要な因子であり、CY-TBIによる前処置後でも若年者では一部の患者さんで性腺機能の回復が認められています。一方、BU-CYを用いて移植を行った場合は、若年女性患者でもほとんど卵巣機能の回復は認められていません。すなわち、BUの卵巣への悪影響はTBIよりも強いと考えられ、性腺機能の温存を目的としてフルダラビン(FLU)-BUのミニ移植前処置を選択することは不適切です。一方、FLU-メルファラン(L-PAM)のミニ移植では卵巣機能が回復する確率は高いとされています。

※移植後の不妊のリスクについては「6-4. 妊孕性の温存」を参考にしてください。

その他、移植後の慢性GVHDの発症も性腺機能に影響を与えると考えられています。同種移植の2~20年(中央値9年)後に精子が検出できたのは、慢性GVHDを有する11名の患者さんのうち2名のみであったのに対して、慢性GVHDを合併していない28名中16名と有意に多かったということが報告1)されました。また、同種移植の1~2年後の卵巣、子宮のサイズは慢性GVHDを合併している患者さんで有意に小さかったということも示されています2)

通常の(移植以外の)抗がん剤投与も性腺に影響を与えますが、女性患者さんの卵巣機能は多くの場合時間とともに回復します。精巣はより強い影響を受けますが、精巣機能についても恒久的な無精子症になることは多くはありません。放射線照射の影響も卵巣より精子のほうが強く出やすく、精巣機能は低線量の放射線照射によっても影響を受けます。

なお、実際に移植後に女性患者さんあるいは男性患者さんの配偶者が妊娠した場合の出生について、米国でアンケート調査3)が行われ、生児出生の確率は一般の出産と同程度であったと報告されています。また、ヨーロッパで行われたアンケート調査では、生児出生の確率は85%であり、通常の出産と比較して帝王切開、早期産、低体重児の頻度が高く、母子ともに高リスク出産として扱うべきとされています4)。いずれの調査でも先天性異常や発育遅延の頻度は増加していませんでした。

<参考文献>

1) Blood 108:1100-1105, 2006.
2) Hum Reprod. 18:1410-1416, 2003.
3) Blood 104: 58, 2004.
4) Lancet 358: 271–276, 2001.

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