一般社団法人日本造血細胞移植学会 The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation

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11-9. ホルモン補充療法

最終更新日:2018年5月17日

ホルモンとは

ヒトのからだには正常な機能を保つために内分泌代謝作用を示す物質(ホルモン)が存在しています。ホルモンを産生する代表的な臓器(内分泌臓器)には、視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓、副腎、性腺(精巣、卵巣)があります。この他に、心臓、肝臓、腎臓、胃、腸管、脂肪、骨などもホルモンを分泌することがわかっています。これらのホルモンは血液によって標的臓器に運ばれて、あるいは分泌された局所において作用し、からだの健康を保つために様々な働きをしています。ホルモンは体の中には微量しかありませんが、適切なレベルとなるように厳密にコントロールされています。

ホルモン補充療法

頭の中心にある視床下部と下垂体は、ホルモンの司令塔として重要な働きをしています。視床下部から下垂体を刺激するホルモンが分泌され、下垂体から全身の標的臓器に対してホルモンが分泌されます。標的臓器から分泌されるホルモンレベルが低下すると、代償的に視床下部・下垂体から刺激ホルモンが多く分泌されるというフィードバック系が存在します。この代償機能が及ばない場合、ホルモン不足となり様々な症状が生じます。

ホルモン分泌不全の病態は、下垂体ホルモンの分泌が低下した場合(中枢性)と、標的臓器からのホルモン分泌が低下した場合(原発性)に分けられます。ホルモンの欠乏状態(機能低下)と診断されたら、ホルモン補充療法がおこなわれます。

晩期合併症と内分泌異常

「晩期合併症」とは、がんの治療後における治療に関連した合併症または疾患そのものによる後遺症等を指し、身体的な合併症と心理社会的な問題があります。身体的な合併症にはさまざまな疾患が含まれますが、内分泌異常のみられる頻度が高いことが分かってきました。がんの治療後に寛解状態であっても、年数が経過するともに晩期合併症と呼ばれる健康問題の罹患率が増えていくことが近年問題となっています。

化学療法や放射線療法によって内分泌臓器あるいは標的臓器が障害されると、ホルモンの働きが異常となります。障害の程度は治療の種類・治療量、臓器の感受性により異なり、患者の性別・年齢などによっても異なります。

原疾患の治療がほぼ終了し、診療の重点が晩期合併症、後遺症や副作用対策が主となった時点からの対応のことを、「長期フォローアップ」といいます。内分泌異常は徐々に明らかとなる場合が多いため、ホルモンレベルが適切に維持されているかについて、リスクに応じて定期的な評価をすることが大切です。成長期に治療をうけた小児がん経験者(CCS)の場合は、身体的発育や性発育の途上であることから特に注意が必要です。成長ホルモンの必要量が増加して性ホルモン分泌のはじまる思春期になって、初めて内分泌異常が明らかとなる場合があります。頭部照射後の下垂体機能低下症は照射量に依存して、加齢と共に内分泌異常の頻度が増加します。
以下に、代表的なホルモン補充療法について解説します。

表:治療別内分泌合併症一覧表

    成長ホルモン 性腺系 副腎系 甲状腺系 肥満高脂血症 糖代謝 骨代謝 水電解質 高血圧
放 射 線 照 射
 
 
 
 
 
頭蓋照射                  
大量
(>30 Gy )

***
中等量
(>18Gy)

*

***
 
少量
(7-12 Gy)
       
局所照射          
全身照射(TBI)  
化 学 療 法 剤
 
 
 
 
 
アルキル化剤 **            
アントラサイクリン                
メソトレキセート            
プラチナ製剤            
ステロイド剤          
L-アスパラギナーゼ                

◎:可能性が高い  ○:可能性が充分ある  △:可能性があり得る
    * 中枢性思春期早発症の可能性があるが、次第に性腺機能低下症に移行する場合もある。
  ** ブスルファン、シクロホスファミドなど。
*** GHD や中枢性性腺機能低下症を伴った場合

日本小児内分泌学会CCS委員会『小児がん経験者(CCS)のための内分泌フォローアップガイド』より引用

1)成長ホルモン

視床下部から下垂体を刺激する成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)が分泌されます。下垂体から分泌される成長ホルモン(GH)により肝臓からインスリン様成長因子1(IGF1)が産生されて骨が刺激され、身長が伸びます。成長ホルモンが不足した小児では伸び率が低下し、低身長になります。成人でも成長ホルモンは少量分泌されており、代謝の促進などに必要です。成長ホルモン分泌不全性低身長症の小児では、成長ホルモン治療を在宅自己注射で行います。がんの治療中は成長ホルモンの使用は禁忌で、治療後に寛解状態を維持している方が適応となります。

2)男性ホルモン

視床下部から下垂体を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が分泌されます。下垂体からゴナドトロピン、すなわち黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、精巣が刺激されて男性ホルモン(テストステロン)が分泌されます。男性ホルモンが不足すると、二次性徴の異常や、筋力低下、性機能低下、不妊などがおこります。精巣が障害されてホルモン分泌が低下している場合には男性ホルモン製剤の注射が行われます。精巣機能が残っている場合には、精巣を刺激して男性ホルモン産生を促す薬剤(hCG製剤)や精子形成を促す薬剤(リコンビナントFSH製剤)の注射が用いられます。

3)女性ホルモン

女性では下垂体から分泌されるゴナドトロピン(LH、FSH)の作用により、卵巣が刺激されて卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。これらの女性ホルモンが不足すると、思春期の開始時期や進行の異常、月経停止、不妊、骨密度低下などがおこります。ホルモン補充療法として、女性ホルモンの経口または経皮投与が行われます。女児で二次性徴を誘導する場合には、エストロゲン製剤を少量から開始して徐々に増量し、黄体ホルモン製剤を併用して定期的な月経を誘発します。

妊娠への影響に関しては腹部・骨盤への放射線照射の有無およびその線量が特に重要です。ただし、受けた治療内容が同じでもその影響には個人差がありますので、個別にリスクを評価して妊娠管理を行うことが重要です。不妊の場合には不妊治療を行います。

4)副腎皮質ホルモン

視床下部から下垂体を刺激する副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌されます。下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)により、副腎皮質ホルモンが分泌されます。このホルモンは生命維持に最も重要なホルモンのひとつです。不足すると易疲労感、体力減少、悪心・嘔吐、低血圧、低血糖、低ナトリウム血症などがおこります。ホルモン補充療法としてヒドロコルチゾンの内服を行います。急性副腎不全の発症を予防するために、発熱・下痢などのストレス状態では通常量の2-3倍の服薬が必要です。

5)甲状腺ホルモン

視床下部から下垂体を刺激する甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が分泌されます。下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の作用により、甲状腺からサイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン (T3)が分泌されます。甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節しており、不足すると体の様々な機能が低下し、疲労感・無気力・寒がり・むくみ・便秘などの症状がおこります。ホルモン補充療法として合成T4製剤(レボチロキシンナトリウム)の内服を行います。

6)抗利尿ホルモン

下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(ADH)は腎臓で水の再吸収を促進しています。このホルモンが不足すると多尿となるため、口渇、多飲の症状も出現し、中枢性尿崩症を発症します。ホルモン補充療法としてデスモプレシンの点鼻または経口製剤が用いられます。季節や生活スタイルに応じた投薬量の調整が必要で、水中毒に注意する必要があります。

7)インスリン

膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインスリンが低下すると、血糖を下げることができなくなり、糖尿病を発症します。栄養・運動療法をおこなうと共に、血糖値を定期的に測定しながら、ホルモン補充療法としてインスリン注射を行います。経口糖尿病薬を用いる場合もあります。

図:ホルモンマップ
<参考サイト>

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