一般社団法人日本造血細胞移植学会 The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation

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12-2. 感染症

最終更新日:2018年5月17日

移植後に起こりうる感染症

1)細菌感染症

移植後早期の生着を得るまでの白血球の極めて少ない時期は、細菌や真菌の感染が起こりやすい時期です。前処置によって腸管粘膜が障害され、激しい下痢を起こし、腸管内にいる細菌が粘膜から血管内に侵入することで全身性の感染症を引き起こしたり、皮膚にいる細菌が中心静脈カテーテルなどを介して感染を起こす可能性があります。さらに口腔内の細菌・真菌(カビ)も感染症の原因になることがあります。また、この時期の感染症は進行が速く、十分な対応を行ったとしても重症化すると生命を脅かす可能性があります。そこで、多くの施設では、耐性菌の出現を厳重に注意しながら移植前から予防的に経口抗生物質の内服を実施し、発熱を認めた場合には速やかに抗生物質の点滴投与を行います。

2)真菌感染症

同種移植患者さんでは、移植前処置などで損傷した消化管粘膜や中心静脈カテーテル刺入部の皮膚などからカンジダという真菌(カビ)が血管内に侵入し感染症を引き起こすことがあります。また、免疫力が低下しているため、アスペルギルスやムーコルという真菌(カビ)が、空気中から肺や副鼻腔に侵入し感染症を発症することがあります。また、ニューモシスチス・イロベチイという真菌の一種が肺炎を起こすことがあります。

移植後にカンジダに対して有効であるフルコナゾールという抗真菌剤を予防的に内服することが多くなって以降、カンジダ感染症は減少傾向で、現在ではアスペルギルス感染症の頻度が最も高くなっています。

同種移植の中では、HLA一致血縁者間移植と比較して、非血縁者間移植やHLA不一致移植で発症率が高く、また、侵襲性真菌感染症の既往がある患者さんにおける移植後の発症率は、既往がない患者さんに比べて高いとされています。
代表的な真菌感染症について解説します。

a)カンジダ感染症
好中球が極端に減少している同種移植患者さんでは、移植前処置などで損傷した消化管粘膜や中心静脈カテーテル刺入部の皮膚などからカンジダが血管内に侵入し感染症を起こすことがあります。そこで、移植後早期の好中球減少期は、この皮膚、粘膜の常在菌であるカンジダ属を標的とした薬剤を患者さんは内服し、感染症を予防します(移植前に真菌感染症の既往のない場合)。

b)アスペルギルス感染症
アスペルギルスは、抵抗力や免疫力が低下している時に感染しやすい真菌(カビ)の一種です。空中に浮遊する胞子を吸い込むことによって、肺炎や副鼻腔炎などが起こります。血管を侵襲し、血流にのって肺や全身に播種し、重症化する可能性のある感染症です。環境から感染するため、移植直後はクリーンルームに入室して予防します。移植前に感染症を起こした患者さんにはアスペルギルスに有効な薬剤を予防的に投与します。さらに、移植後GVHDなどの発症しステロイドの投与が必要になった場合もこのアスペルギルス感染症の発症リスクが上昇するため、抗真菌剤予防投与が考慮されます。また、退院後はアスペルギルス感染を予防するため、建物の建築現場や解体現場、ほこりの積もっている環境は避けるようにします。

cニューモシスチス肺炎
真菌の一種であるニューモシスチス・イロベチイ(旧称:カリニ肺炎)が,免疫力が低下して患者さんに感染症を引き起こします。ほとんどの場合はニューモシスチス肺炎の形をとりますが、まれに,リンパ節や骨髄,耳,眼,甲状腺,副腎,肝臓,脾臓などに病変を形成する場合もあります。同種造血幹細胞患者さんでは、ニューモシスチス肺炎予防として、ST合剤の予防内服を、造血幹細胞に対する毒性を考慮し移植前と生着後から開始し、少なくとも6か月以上免疫抑制剤終了まで継続するのが一般的です。なお、発疹などのアレルギー症状により内服できない時はペンタミジン(ベナンバックヌ$)の定期的な吸入を行うこともあります。

3)ウイルス感染症

移植早期には単純ヘルペスなどのウイルス感染による口内炎が発生することがあります。そこで移植前から抗ウイルス剤の予防内服を行います。さらに、造血幹細胞が生着し白血球が回復してからも移植後約3~4カ月頃までは、サイトメガロウイルスによる肺炎、肝炎、腸炎および網膜炎や、アデノウイルスやBKウイルスによる出血性膀胱炎などのウイルス感染症が発生する可能性があります。特に急性GVHDの発症によりステロイド治療が実施される場合はウイルス感染症の発症リスクが上昇します。また、移植後後期においても水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化による帯状疱疹を発症することがあります。そのため最近では免疫抑制剤が中止できるまでは水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗ウイルス剤の予防内服を継続する場合が多くなっています。
以下に代表的なウイルス感染症について解説します。

aサイトメガロウイルス(CMV)感染症
サイトメガロウイルスは多くの人がすでに身体の中に持っているウイルスですが、移植後の免疫力の低下に伴って再活性化して、肺炎、胃腸炎、網膜炎や肝炎などを引き起こすことがあります。血液検査で定期的にウイルスの量を検査し、一定の量を越した時点で、感染症を発症しないように薬剤による治療を行います。

b膀胱炎
BKウイルス(BKV)とアデノウイルス(ADV)が主な原因で出血性膀胱炎が発生することがあります。排尿時痛、頻尿、残尿感、血尿などの症状が出現します。水分を摂取し、陰部の清潔を保ち、排尿を我慢しないように心がけるのが重要です。また、BKウイルスは多くは尿路にとどまりますが、アデノウイルスは全身に播種して重症化することがあり、そのような場合は積極的な治療が必要となります。

c帯状疱疹(水痘・帯状疱疹ヘルペス、VZV)
すでに多くの人が身体の中に持っている水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルス(水ぼうそうのウイルス)が原因で免疫力が低下した際に発症します。ピリピリした痛みやかゆみ、水ぶくれ、湿疹が特徴で、上半身(胸・背中・脇腹あたり)によく起こります。移植後何年たっても発症する可能性があり、現在では免疫抑制剤を内服している間は予防的に抗ウイルス薬を投与している施設もあります。

移植後早期の感染予防について

1) クリーンルーム

アスペルギルスなど真菌(カビ)や細菌による環境・空気を介する感染症を予防するために、白血球が生着するまでの一定期間、患者さんはクリーンルームへ入室して過ごします。なお、最近ではクリーンルームのことを「防護環境」と呼ぶことも多くなっています。白血球が生着すると、医師の指示の元に少しずつ活動範囲が拡大されます。

2)うがい。手洗い

感染予防にとしてうがい、手洗いといった患者さん自身による感染予防が何よりも大切です。手指の衛生は速乾性のアルコール手指消毒で十分ですが、手指が実際に汚れたときは、液体石鹸と流水でしっかり手を洗うことが必要です。また、トイレの後、食事や内服の前、検査などからの帰室時も、必ず液体石けんで手を洗い、うがいを行うことが大切です。なお、固形石鹸の使用は推奨されていません。

3)口腔ケア

口腔内には雑菌がたくさんいるので、口腔ケアは非常に大切になります。口腔内の感染の危険を減らすため、移植前に口腔外科や歯科を受診し、口腔の状態を改善しておくことが推奨されています。粘膜は乾燥に弱いため、口腔ケアの目標は、口腔内を清潔にかつ潤っている状態にしておくことです。定期的のうがいを行い、丁寧に柔らかい歯ブラシを使って歯を磨くことが大切です。
口腔ケアの項をご参照ください。)

4)身体の清潔

皮膚の清潔を保つために、可能な限り毎日シャワーや清拭などを行うことが推奨されています。皮膚に刺激を与えないように、弱酸性の石鹸の使用、やわらかいタオルの使用を使用します。また陰部の清潔を保つために、排便後はウォシュレットなどを使用することが推奨されています。

5)植物・ドライフラワーの病室への持ち込み

植物・ドライフラワーの病室への持ち込みの持ち込みは、ほこりの集積、虫の混入、水・土地の中の菌繁殖の点から禁止している施設が多いです。

6)食事について

食事に関しては、免疫抑制状態によって一定の期間、食事制限があります。
食事の項をご参照ください。)

退院後の生活における感染予防

1)自宅の準備・掃除

感染症予防のために、患者さんが外泊や退院をする前に、患者さん以外の方が掃除や必要があれば模様替えを実施し、自宅を清潔な環境に保っておくことが必要になります。

ほこりや水回りには、細菌、真菌(カビ)、ウイルスがもともと存在していますので、特別な消毒や殺菌は必要ありませんが、患者さんが居住する部屋や台所、お風呂、洗面所、トイレ、よく触る扉や棚、取っ手などはこまめに掃除を行うことが大切です。特に水回りは菌が繁殖(はんしょく)しやすいので、乾燥させることが重要です。

2)エアコン、加湿機

エアコンや温風器などは内部にほこりやカビがたまりやすいので注意が必要です。冷蔵庫も定期的に掃除をする必要があります。また加湿機の使用はなるべく避けることが望ましいですが使用する際は、レジオネラ属菌や真菌の繁殖を防ぐために毎日洗浄と水の交換を行います。

3)手洗い・うがい

退院後も、感染予防の基本は手洗いとうがいです。食事前、トイレの後、外出からの帰宅時など液体石けんで丁寧に洗い、流水でよく流すことが重要です。外出先などで手洗いができない場合など、市販されている速乾性手指消毒剤で代用することもできます。手指衛生が実施されていない手で目、鼻、口に触ることは極力避けるようにします。

4)行動範囲

退院後、医師の指示の元に少しずつ活動範囲が拡大されます。ただし、人ごみへの外出や呼吸器症状のある人との接触はできるだけ避けるように注意すべきです。また、アスペルギルスの曝露(ばくろ)を可能な限り避けるため、建物の建築現場や解体現場、ほこりの積もっている環境は避けるようにします。土や水あか、植物には直接接触しないようにすることが必要で、園芸や農作業は避けるべきです。どうしても接触しなければならない場合には、手袋、マスクを装着するようにします。また、レジオネラ菌への曝露(ばくろ)を可能な限り避けるため、銭湯などの公共浴場、循環式風呂やプールの利用は避け、ジャグジー風呂、打たせ湯、噴水などのエアロゾルが発生する場所へ近づくことも避けるべきとされています。

5)口腔ケア

入院中と同じようにうがいや歯磨きを行い、口腔内の清潔を保持することが重要です。
口腔ケアの項をご参照ください。)

6)禁煙

肺炎を予防するため、禁煙が必要です。ご家族の喫煙による副流煙も肺炎の原因となります。

7)食事

食事に関しては、免疫抑制状態によって一定の期間、食事制限があります。
(食事の項をご参照ください。)

8)シャワーや入浴

皮膚が弱く刺激を受けやすくなっているため、皮膚を擦らず泡をたててやさしく洗うようにします。また、お湯は高温を避けることも大切です。ボディソープやシャンプー類は詰め替えせずに新しいものを買うようにします。また、上述しましたように、レジオネラ菌への曝露を可能な限り避けるため、銭湯などの公共浴場、循環式風呂やプールの利用は避けるべきとされています。

9)ペットについて

犬や猫、鳥に寄生する細菌に感染する危険性がありますので、基本的にペットとの接触はできるだけ避けようにします。特にクリプトコックス、トキソプラズマ、サルモネラの危険があるため、ハトや鳥、猫の糞、爬虫類との接触は避けるべきです。ペットやペット周囲のものに触れた場合には、手指の洗浄をしっかりと行うようにします。ペットの排泄物に直接接触しないようにし、どうしても接触しなければならない場合には、手袋とマスクを装着するようにします。また、新しくペットを飼う、家畜の世話をするなどは、移植後しばらくは行えません。

10)性生活

性生活は定まったパートナーに限定しコンドームを使用します。また、患者の粘膜と精液、唾液等の粘液が直接接触する行為は避けるべきとされています。
性的問題の項をご参照ください)

11) ご家族の体調管理

ご家族も健康管理には十分気を配り、手洗いやうがいを励行することが大切です。特に小さいお子さまと生活される方は、抱っこなど濃厚な接触は避けたほうがよいとされています。ご家族が風邪やインフルエンザなど、伝染性疾患にかかった時は、別の部屋で過ごすなど工夫し、手洗いやうがい、マスクの着用を心がけ、タオルの共有などは避けるようにします。ご家族がインフルエンザにかからないために、インフルエンザワクチンの接種が推奨されています。

12)予防接種

感染予防のため、移植後のそれぞれに時期に推奨されるワクチン接種があります。
(ワクチン接種の項をご参照ください。)

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