一般社団法人日本造血細胞移植学会 The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation

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12-3. 口腔ケア

最終更新日:2018年5月17日

造血幹細胞移植では、多くの患者さんに口に関わる副作用が出現すると言われています。口に副作用が出ると、痛みで話せなくなったり、食事をとることができなかったり、唾液を飲みこめなくなってしまうなど、つらい思いをすることがあります。さらに、口の中の細菌により感染を引き起こすなど、治療そのものを邪魔してしまうことすらあります。このような症状をできるだけ防ぎ、安全かつ苦痛を少なく治療を乗り切るには、移植前から口腔ケアを行い、口の中を良い状態に保つことが大切です。

口腔内の特徴

口の中は体の他の部分と比べて、非常に多くの細菌が生息しており、その種類は500~700種類もいることが知られています。歯の表面などに付着している細菌の塊を「歯垢(プラーク)」といいます。この歯垢1mgには1~10億もの細菌がおり、これは大腸の中と同じくらいの細菌の数になります。これら歯垢の細菌は、消毒薬やうがいだけでは減らすことができず、歯磨きなどによってこすり落とさなければなりません。

虫歯や歯周病などの歯の病気は、口の細菌によって起こります。たとえ本人に痛みなどの症状がなくても、口の中にはこのような細菌の巣がある事が多いのです。特に歯周病は、免疫力が低下したときに感染の源になりやすいことが分かっています。

このような特徴のために、お口は常に感染の源となる可能性があり、移植治療中はこの口の中の細菌が色々なトラブルに関わってきます。

移植に関わる口腔内トラブル 

1) 口内炎(口腔粘膜炎)

抗がん剤治療や全身放射線治療は口腔粘膜の細胞にもダメージを与えます。そのため粘膜は非常に傷つきやすくデリケートになります。ひどくなると粘膜は剥がれて潰瘍(傷)をつくり、痛みや出血をおこします。通常、移植前処置が始まってから2~3日頃から徐々に症状が出てきます。7~12日目あたりが症状のピークで、感染などが起きなければ、34週目あたりには治癒します。

口内炎のできやすい所はほぼ決まっており、舌の両わき・頬の内側・口唇の裏などに見られ、歯肉や上あご、舌背(舌の中央付近)には殆ど起こりません。のどや食道の粘膜にも同じような症状が現れることがあります。

2) 口の感染症

移植治療中、白血球の減少により体の免疫力は一時的にですが、非常に弱くなります。免疫力が弱まると、普段は何でもなかった細菌やウイルス、真菌(カビ)が強敵となってしまいます。

このような時には、今までは問題が無かった歯の病気(虫歯や歯周病など)が急に悪化して、感染の源になることがあります。口の細菌は時に血液の中にまで入り込んで、発熱など全身の感染に広がることすらあります。また、お口の清掃がうまくいかず、汚れが多いと、細菌だけでなくカビの一種であるカンジダや、ヘルペスなどのウイルスによる感染を起こす事もあります。

3) 口の乾燥

唾液腺(唾液を分泌する組織)が抗がん剤や放射線の影響を受けるため唾液の分泌が減ります。また、GVHDによっても唾液の分泌が減ります。口の中が乾燥すると、粘膜は傷つきやすくなり、口の中の汚れもつきやすくなります。

口腔内のトラブルを予防するために

移植治療中に起きる口内炎や口の中の感染は完全におさえきることはできません。しかし、移植治療前に口腔ケアをしっかりと行うことで、起こる頻度を下げたり、起こったときの重症化を避けたりすることができる可能性があります。少しでも治療中のトラブルのリスクを下げるために、今日から口腔ケアを始めましょう。

1) 歯科受診

移植治療前にきちんと歯科医の診察を受けることで、予測されるお口のトラブルを予防したり、症状を軽くして副作用が出にくいお口の環境をつくったりして、移植治療をスムーズに進めることができます。移植治療の始まる2週間前までに歯科医の診察を受けることが推奨されています。

歯科では、大きな虫歯や歯周炎など、移植治療中にトラブルになりそうな歯がないかをチェックし、そのような歯があれば、最低限、移植治療が落ち着く間まで問題なく過ごせるように応急的な治療をしていきます。また、クリーニング専門の機械を使って歯石やプラークを徹底的に落とします。そして、その状態を保つために患者さん自身で『正しい歯磨き』が行えるよう指導していきます。

2) 歯磨き

患者さんの口の中の状況に合った清掃方法でケアを続けていきましょう。

a) 歯ブラシの選び方

  • ヘッドの部分はなるべく小さく、柄の部分はまっすぐのものが、おすすめです。
  • 歯ブラシの毛はナイロン製が衛生的に管理しやすく、おすすめです。

b) 歯ブラシの管理

  • 移植前には、歯ブラシを新しいものに取り替えましょう。
  • 歯ブラシを使ったあとは、キャップをつけず、毛先をよく乾かしましょう。

c) 歯みがきのコツ

  • 歯垢が付着して汚れやすい場所は歯間・歯と歯肉の境目です。歯と歯肉の境目にブラシの毛先を当て、歯間や歯周ポケットに毛先が入るよう、小刻みに動かします。強い力を入れる必要はありませんが、1本1本ていねいに磨きましょう。
  • 舌を軽くみがいて舌の汚れも落としましょう。
  • 少なくとも1日3回は歯みがきをしましょう。
  • 食事をしていなくても、1日1回はしっかり歯みがきをしてください。
  • 歯みがき粉を使用する必要はありませんが、使用する場合は、刺激の少ないものにしてください。

d) 歯ブラシ以外の清掃補助用具について

  • 歯間ブラシやワンタフトブラシ(1本歯ブラシ)など、歯ブラシ以外の清掃補助用具も上手に活用しましょう。
  • デンタルフロス(糸ようじ)は、使い方を誤ると歯肉を傷つけたり、出血の原因となるため、移植中はなるべく使用しない方がよいでしょう。
  • 粘膜の汚れ、ぬるぬるした唾液の除去にはスポンジブラシが有効なことがあります。

3) うがい

うがいの目的は、大きな食べかすなどを洗い流し、口の中の粘膜を清潔に保ち、潤いを与えて粘膜を保護することにあります。

a) うがいの方法

  • 水またはぬるま湯で口の中でブクブク・のどの奥でガラガラと5回ほどうがいをしましょう。
  • うがいの回数を多くすることは、口の中を清潔に保つ効果があります。その目安は、約2時間ごとです。
  • 食前、食後、寝る前、夜中目が覚めた時、トイレの時など、こまめにうがいをしましょう。
  • メントールやアルコールを含んだ市販のうがい薬は刺激が強く、口の乾燥を促進してしまうため、使用は避けてください。
  • うがいをした後は、乾燥を予防するため唇に必ずリップクリームをつけましょう。

4) 義歯(入れ歯)の清潔

移植中でも義歯は使用できますが、口内炎ができた場合、義歯の刺激で悪化することがあるので、食事以外はできるだけ外してください。毎食後、義歯を外して義歯用ブラシできれいに洗ってください。また、義歯を長時間外す時は、義歯用の洗浄液につけて保管しましょう。

5) 禁 煙

喫煙していた方はたばこのヤニで歯・歯肉・粘膜が汚れており、粘膜の血行も悪く、絶えず刺激を受けています。そのため口内炎や感染が重症化する確率が高くなります。

口内炎(口腔粘膜炎)ができてしまったら

口内炎ができてしまったとき、一番大切なことは「口内炎の傷から感染を起こさせないこと」です。その上で痛みを和らげて、なるべく早く治るよう対応を行います。

1) 口内を清潔に保つ

口内炎に感染が起きると、痛みは悪化し、治癒も遅れます。症状を抑えるためにも、できる範囲で口腔ケアを行い、口内を清潔に保ちましょう。口内炎の状態や痛みの程度に合わせた口腔ケアの方法は、医療者といっしょに相談しながらすすめていきます。

歯肉を傷つけることは感染や出血の原因となるため、出血や粘膜炎がひどいときは、歯ブラシを柔らかいものに変えてください。

a) 口内炎の時に使われるうがい薬

アズレンのうがい
アズレンは粘膜の炎症をおさえ、粘膜の回復を促進するうがい薬です。20~30秒間うがい薬を口の中に含んでおくと、より効果的です。潤いの促進のため、グリセリンを混ぜて使うこともあります。
重曹のうがい
重曹は粘膜の汚れを取る作用があり、口腔内をさっぱりさせる効果があります。
生理食塩水のうがい
生理食塩水は最もしみないうがい薬です。痛みが強く、他のうがいがしみて使えない時に使用します。
痛み止め入りのうがい
キシロカイン(表面麻酔薬)でのうがいで、痛みを痺れされて口内炎の症状を和らげることができます。

2) 口の乾燥を防ぐ

抗がん剤の影響により唾液が減っていることに加え、乾燥すると荒れた粘膜の痛みはさらに強くなります。うがい、水で口をしめらす、マスクをする、唇にはリップクリームなどをつけてうるおいを与えるようにしてください。

3) 痛みを我慢しない

口内炎の痛みには、ある程度痛み止めが効きます。うがい薬に麻酔薬(キシロカイン)を混ぜることも効果的です。また氷のかけらやアイスキャンディーなどで口のなかを冷やすと、痛みが和らぐことがあります。それでも痛みがコントロールできないときはモルヒネ(医療用の麻薬)の点滴をします。痛みは我慢せずに医療者に伝えてください。

4) 食事

食事は粘膜に刺激を与えないように熱いもの、辛いもの、酸味のあるもの、かたいものは避けるようにしてください。口の状態に合わせて、食事内容の変更を医療者に相談してください。

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