一般社団法人日本造血細胞移植学会 The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation

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第41回日本造血細胞移植学会
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3-1. 移植の適応となる疾患

最終更新日:2018年5月17日

造血幹細胞移植という治療法には、いくつかの目的があります。それぞれの目的に応じて造血幹細胞移植の適応となりうる疾患があります。移植適応となる疾患の種類や疾患の状態の詳細は日本造血細胞移植学会からガイドラインが示されています。ここでは移植適応に関する考え方を述べさせていただきます。

がんに対して強力な治療を実施する

現在、血液のがんに対する治療法としては、主としてがん化学療法が実施され、一部の患者さんに放射線療法が行われています。一般的には、抗がん剤の投与量や放射線照射の照射線量を増量することができれば、抗腫瘍効果(がんに対する効果)がさらに高まることが期待できると考えられます。しかし、これらの投与量がある一定の用量を超えると正常な臓器に影響が発生するため、抗がん剤の投与量や放射線照射の照射線量には上限があります。特に骨髄は造血幹細胞が盛んに細胞分裂を行っているため最も抗がん剤の影響を受けやすい臓器に一つです。そのため多くのがん化学療法では、骨髄への影響が重大ではなく、血液中の白血球が一時的に低下しても患者さんの生命を危険にさらさない期間内に回復する範囲で抗がん剤の投与量の上限が定められています。もし、その上限を越した抗がん剤を投与すると、がん細胞に通常の治療よりも壊滅的な効果を発揮することができますが、その反面、白血球が長期間減少し、重い感染症などの合併症が発生します。この問題を解決する一つの方法が造血幹細胞移植です。すなわち、あらかじめ正常な造血機能を有する造血幹細胞を確保しておいて、そのうえで、通常の上限を超すがんを壊滅できる量の抗がん剤投与や全身放射線照射を行います。この結果、骨髄の造血機能にも回復できないほどの影響が出ますが、その後に造血幹細胞を移植することによって、一定期間で正常な造血機能を取り戻すことができます。こうして造血幹細胞移植によって従来よりも大量の抗がん剤や放射線照射が可能になり、治療効果の向上が期待できるのです。このような目的で造血幹細胞移植を実施する場合、がん化学療法あるいは放射線療法に対して効きやすい血液のがん、すなわち、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などが造血幹細胞移植の適応になります。

低下した骨髄の造血機能を回復させる

もう一つの造血幹細胞移植の大きな目的は、造血機能が低下した患者さんに、ドナーさんから正常な造血幹細胞を移植することで、低下した造血機能を回復させることです。再生不良性貧血や骨髄異形成症候群など造血機能の低下を来す疾患が、こうした造血幹細胞移植の適応になります。また、造血機能や血球機能が低下する遺伝性疾患(慢性肉芽腫症、Fanconi貧血、先天性代謝異常など)も造血幹細胞移植の適応です。

同種免疫による抗腫瘍効果に期待する

「免疫」とは、体に侵入した病原体や異物を見つけて排除する働きのことです。体が病原菌に感染しない、感染しても病原菌を排除して回復できるのは、この免疫機能があるからです。免疫機能は、主としてリンパ球という白血球の一種が担っています。造血幹細胞移植では、移植時の造血幹細胞と一緒に注入されるリンパ球や、移植された造血幹細胞から成長したリンパ球が免疫機能を担い、移植された患者さんの体そのものを異物とみなします。そして、皮膚や肝臓、腸管といった臓器・組織で免疫反応を起こします。こうした反応によって起こる症状を、「移植片対宿主病(GVHD)」と呼びます。もし、患者さんの体にがん細胞が残存していれば、移植された白血球にとってはそのがん細胞もまた異物であり、移植されたリンパ球はがん細胞に対しても免疫反応を起こし、がん細胞を排除しようとしてくれます。これを、「同種免疫反応による抗腫瘍効果(移植片対腫瘍効果(GVL効果)」といいます。この効果は抗がん剤や放射線照射とは異なるメカニズムで、同種造血幹細胞移植の重要な役割です。がん化学療法の効果が不十分で寛解にならない状態であるか、もしくは現在は寛解であるが化学療法だけでは治癒せず再発の可能性が高いと考えられる白血病、悪性リンパ腫などがこうした考えのもとで同種造血幹細胞移植の適応となります

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